第10章 耳へのキス
ソファで並んでテレビを見ていたはずなのに、いつの間にかテレビの内容は頭に入ってこなくなっていた。
原因は、隣にいる脹相。
さっきから、やたらと耳元にキスをしてくる。
髪をそっと耳にかけられて。
ちゅ。
「……っ」
肩が小さく跳ねる。
脹相はそんな私を見て、少し嬉しそうに目を細めた。
「……可愛いな」
「脹相……」
「なんだ?」
また、耳のすぐ近くに唇が触れる。
ちゅ、と小さな音。
「……!」
思わず耳を押さえる。
「音……聞こえる」
「そうだな」
「恥ずかしいから……」
そう伝えたのに、脹相は困ったように笑うだけだった。
「すまない」
謝る声とは裏腹に、嬉しそうだ。
そして少し間を置いて、また一度。
「……脹相!」
「すまない」
「謝ってるのにまたするじゃん」
「……お前が可愛い反応をするから」
「もう……」
耳が熱い。
くすぐったい。
そして、何より恥ずかしい。
耳元で小さな音がするたびに、身体がピクッと勝手に反応してしまう。
それが分かっているのか、脹相はますます楽しそうだった。
もう一度。
ちゅ。
「……っ」
「……」
脹相が私を見る。
私は耳を隠したまま、少し俯いた。
「……食べられそう」
「食べない」
「でも、さっきからずっと……」
「すまない」
また笑う。
「本当に、すまないと思っているのか分からない」
「思っている」
「じゃあ、やめて」
「……」
脹相が止まる。
けれど、その顔には名残惜しさがはっきり出ていた。
「……分かった」
そう言って、今度こそ離れる。
そのはずだった。
なのに。
少し経つと、また髪に触れる。