第1章 告白
夜が深くなった頃。
二人きりの部屋は、いつもより静かだった。
ソファに並んで座っているのに、脹相はさっきからほとんど口を開かない。
何かを考えているのは分かる。
けれど、こちらから尋ねても
「……いや」と短く返すだけだった。
「脹相?」
もう一度呼ぶと、彼はゆっくりこちらを向いた。
「……〇〇聞いてほしい」
その声はいつもより低く、少しだけ掠れていた。
「俺は、お前に言わなければならないことがある」
脹相は一度目を伏せる。
そして、しばらく迷ったあと、静かに口を開いた。
「俺は……〇〇が好きだ」
胸が跳ねた。
けれど脹相は、それだけでは終わらせなかった。
「ずっと好きだった」
その言葉が、重く胸に落ちる。
「ずっと……?」
「ああ」
脹相は小さく頷いた。
「いつからかは、もう分からない。気づいたときには、お前が俺にとって特別になっていた」
一緒にいる時間が増えて。
何気ない会話をするようになって。
隣にいることが当たり前になって。
気づけば、目で追うことが増えていた。
「最初は、そばにいられるだけでよかった」
脹相の視線が、繋がっているわけでもない私の手へ落ちる。
「お前が笑っていれば、それでいいと思おうとした」
けれど、それは簡単ではなかった。
「お前が誰かと楽しそうに話していると、気になった。誰かがお前を褒めれば嬉しいはずなのに……心のどこかでは、俺だけを見ていてほしいと思った」
苦しそうに笑う。
「そんなことを思う自分が嫌で、何度も気持ちを抑えた」
言えば、今の関係が壊れるかもしれない。
言わなければ、このままそばにいられる。
だから、ずっと言わなかった。
「何度も告白しようと思った」
「……何度も?」
「ああ」
脹相は頷いた。
「お前が眠ったあと、明日こそ言おうと思ったこともある」
けれど朝になれば、いつも通りに笑っていた。
「お前が『おはよう』と言ってくれるだけで嬉しくなって……結局、言えなかった」
長い時間をかけて積み重ねてきた想い。
その一つ一つが、今になってようやく言葉になっていく。