第1章 最期の手紙
「なんだよ、なんだ……
もうキセキは起こっていたんじゃねえか」
男は膝をついた
涙をボロボロと流し
両の手で顔を覆い空を仰いだ
「カミサマよう、カミサマ
こんなどうしようもねえ男の願いまで聴いてちゃ
忙しくて敵わねえだろうよ」
男は声を震わせ泣いた
「ありがとう…ありがとう……」
「あの娘はさ、
生きてるときにはそんなこと一言も言っていなかったのに
その手紙には、あんたに会いたいって
会って、新しい学校の制服を見せるんだって
吹奏楽部で吹けるようになった
フルートを聞かせるんだって
数学が苦手で教えてほしいって
…あの娘はとうの昔に
あんたを許していたんだ
私が、あんたを許せなかっただけで
あの娘は、あんたを許してたんだ」
男は声を上げて泣いた
いつまでもいつまでも
女はそんな男を見下ろしていた
涙がこぼれないよう、
空を仰いでいた
「あの娘に会ってやってよ
きっと、待ってるからさ」
これは、街に埋もれている
小さなキセキの物語……