第12章 全て元通り
その後は静かな会食が続いた。
たまに一言、二言と言葉を交わすが、すぐに会話は途絶える。
悟が椿の誕生日に姿を見せなくなったのは、ちょうど女遊びを始めた頃からだった。
その前は嫌々ながらもこの日には顔を出し、もう少し会話も続いていた。
一度、椿と悟の関係は大きく変わっていた。
だけど悟はそのことを今になって謝り、椿にも許さなくてよいと言っていた。
また大きく関係が変わったことは、椿にも分かっていた。
なのにまた、後退するように関係を変える悟に、椿は少なからず苛立っていた。
——だったら、あのまま結婚にも無関心な悟のままでいたらよかったのに。
自分に会う時にはスカートを履くことを望み、今までと同じ対応をする椿に苛立ちをぶつけていたくせに、自分だけ元に戻った悟に怒りが湧いた。
椿はテーブルの下で、黒いワンピースの裾を強く握った。
コースが終わり店を出ると、店先には二台の車が停まっていた。
悟は当たり前のように一台の車に乗り込もうとしていた。
なんの未練もないような悟の行動に声を出したのは椿だった。