• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第2章 【第一話】雪に残る歌


同時に、すべてを切り裂く刃のような旋律だった。

白銀の光が、私の喉元から爆発するように広がる。

異形の身体が、大きく仰け反った。

歪んだ笑みが崩れ、金属を引き裂くような絶叫が雪原へ響き渡る。

「……なに……?」

自分の身に何が起きているのか、分からなかった。

ただ、歌は止まらない。

止めることなど、できなかった。

白銀の光は、灰へ崩れかけた母の身体を柔らかく包み込んだ。

黒く侵食された肉体は救えない。

それでも、母の中から淡い光が浮かび上がる。

冷たい灰へ呑まれてしまう前に、穢れのない何かだけが、そっと掬い上げられていく。

「……お母さん……?」

それが母の魂なのだと、なぜか分かった。

同時に、もう一筋の光が異形へ襲いかかる。

母を包む光とは違う。

優しく送り出すためのものではない。

鋭く、眩しく、逃げ場を与えない白銀の奔流。

「ああああああああッ!!」

異形が絶叫する。

黒い身体へ、白い亀裂が走った。

一つ。

二つ。

やがて全身へ広がり、歪んだ顔が崩れ始める。

その時。

聞こえた。

異形の悲鳴の奥から、別の声が。

『……たすけて……』

幼い声だった。

泣きながら、震えながら、助けを求める誰かの声。

「……誰……?」

胸が、大きく揺れる。

母を殺した異形の中に、誰かがいる。

泣いている。

苦しんでいる。

その意味を理解することはできなかった。

けれど、歌を止めてはいけないということだけは、本能のように分かった。

異形の身体が、光の中で激しく軋む。

『いたい……こわい……』

声が胸へ流れ込んでくる。

まるで、自分まで引き裂かれているようだった。

涙が溢れる。

「……ごめんなさい……」

誰へ向けた言葉だったのか、自分でも分からない。

母へなのか。
/ 537ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp