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Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第3章 【第二話】次へ繋ぐ手


「おい、聞こえてんぞ」

少し離れた場所から、師匠の低い声が飛んでくる。

私とアレンは、思わず顔を見合わせた。

ほんの一瞬。

二人の間へ、昔のような重たい痛みではない、柔らかな空気が流れる。

その温度を忘れないように、私は馬車へ乗り込んだ。

扉が閉まる。

御者が手綱を鳴らし、馬車がゆっくりと動き出す。

窓越しに、アレンの姿が見えた。

小さな身体で、懸命にこちらを見送っている。

私は窓を開け、身を乗り出す。

「アレン!」

彼が顔を上げる。

「立ち止まらないで!」

声を張る。

「私も、先で待ってるから!」

アレンの瞳が大きく揺れた。

やがて彼は、胸の前で左手を握り締め、精一杯の声で返す。

「はい! 必ず、追いつきます!」

馬車は速度を上げる。

師匠とアレンの姿が、少しずつ遠ざかっていく。

最後まで、アレンは手を振っていた。

私も、彼の姿が見えなくなるまで手を下ろせなかった。

やがて道が曲がり、宿も、二人の姿も見えなくなる。

急に、胸へ穴が空いたような寂しさが押し寄せた。

私は座席へ身体を戻し、膝の上で手を握り締める。

喉の奥が熱かった。

歌にならない、寂しさの熱。

けれど、泣くのは違う気がした。

私は自分で、この道を選んだ。

師匠の背中を追うだけではなく。

アレンに支えられることを望むだけでもなく。

自分の力と、自分の運命に向き合うために。

窓の外では、乾いた大地が遠くまで続いている。

この先にあるのは、見たこともない黒の教団本部。

私の力を知る者たち。

私を、セトラの子として見る人々。

怖くないわけではない。

それでも。

私は鞄の中にしまった銀の髪飾りと、小さなボタンの感触を思い出す。

一人ではない。

戻りたい場所も、追いついてくると言ってくれた人もいる。

「……行こう」

小さく呟く。

馬車は、朝の光の中を走り続けた。

黒の教団本部へ。

私が、ティファという一人の人間として、エクソシストとして生き始める場所へ。

そして。

いずれ私の運命を大きく変える、幾つもの出会いが待つ場所へ。
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