第23章 【第二十二話】もう戻れない夜
「……今夜、絶対寝不足だな」
ぽつりと落ちた声。
私は思わず小さく笑う。
「私も、眠れる気がしない」
そう返すと、ラビが一瞬だけ目を見開く。
それから、ひどく嬉しそうに笑った。
「……それ聞いたら、ますます帰りたくねぇな」
その翠の瞳が、じっと私を見つめる。
熱い。
チャペルで触れ合った時と同じ熱が、まだ消えていない。
ラビは小さく息を吐くと、そっと私の髪へ触れた。
「……おやすみ、ティファ」
低くて、優しい声。
胸の奥がじんわり熱くなる。
私は小さく頷いた。
「……おやすみなさい、ラビ」
その瞬間、ラビの目が少し細められる。
そして。
「……やっぱ最後に、もう一回だけ」
掠れた声。
答える間もなく、軽く唇が触れた。
短いキス。
けれど、離れたあとも鼓動がうるさい。
ラビは数秒こちらを見つめたあと、困ったみたいに笑う。
「……ほんと帰したくなくなるから、もう部屋入れ」
「ふふ、命令?」
「お願い」
即答だった。
思わず吹き出してしまう。
するとラビも、小さく笑った。
私は扉へ手を掛ける。
けれど、入る直前。
どうしても、もう一度振り返ってしまった。
ラビはまだそこに立っている。
視線が合う。
すると彼は、少し照れたみたいに目を逸らしながら、小さく手を振った。
胸がまた、甘く締め付けられる。