第20章 【第十九話】もう譲れない
胸がぶつかる。
互いの鼓動が、痛いくらい伝わってくる。
「……今のお前、たぶん自分が思ってるより危ねぇ」
翠の瞳が細められる。
「これ以上煽ったら、オレもう止まんねぇぞ」
なのに。
そのくせ。
ラビは唇を重ねない。
代わりに、私の指を強く絡め取った。
恋人みたいに。
離す気なんてないみたいに。
私は逃げる代わりに、絡められた指へそっと力を返した。
その瞬間。
ラビの表情が、壊れそうなくらい甘く歪んだ。
「……っ」
短く息を呑む音。
まるで、自分から触れてきたくせに、触れ返されることには慣れていないみたいだった。
私はそんな彼を見て、胸の奥がきゅうと痛くなる。
ブックマン。
誰にも執着しないよう育てられた人。
本当は、こんな風に誰かへ触れることさえ、怖かったのかもしれない。
「……ラビ」
名前を呼ぶと、彼の翠の瞳がゆっくり細められる。
熱を孕んだ視線。
その眼差しだけで、身体の奥が甘く痺れていく。
「今その声で名前呼ぶの、反則」
掠れた声だった。
私は思わず小さく笑ってしまう。
「さっきから反則ばっかりね」
「お前が悪い」
即答だった。
ラビは絡めた指をゆっくり引き寄せる。
気付けば私は、彼の胸へ軽く寄り掛かる形になっていた。