第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
「ティファ、下がって!」
アレンの声。
直後、巨大な花弁が私へ噛み付こうと迫った。
私は咄嗟にレイピアを突き出す。
だが。
右肩へ激痛が走った。
「ぁっ……!」
動きが鈍る。
その瞬間。
ラビの鉄槌が横から食人花を叩き潰した。
轟音。
花弁が弾け飛び、床へ粘つく液体が飛び散る。
「集中しろ、ティファ!!」
ラビが荒い息を吐きながら叫んだ。
その翠の瞳にも、余裕はない。
食人花が多過ぎる。
押し返しても、押し返しても終わらない。
「アレン!! 左だ!」
「分かってます!!」
左腕のイノセンスが白銀に閃き、蔓をまとめて吹き飛ばす。
だが、その背後から、また新たな花が床を破って現れた。
私は息を呑みながら、必死にレイピアを握り直す。
蔓の向こうで何が起きているのか、確かめる余裕すらない。
今はただ、生き残るだけで精一杯だった。
古びた部屋の床を突き破り、食人花は際限なく湧き続けていた。
巨大な花弁が牙を剥き、蔓が蛇のように石床を這い回る。
もはやそこは、生きた怪物の巣窟だった。