第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
エリアーデは、そんな彼を見つめていた。
その紅い瞳が、苦しそうに震える。
そして。
ふっと、笑った。
「あーあ」
その声音から、先ほどまでの可憐さが消えていく。
「ぶち壊しよ、もう」
次の瞬間、彼女の身体が黒い靄に包まれた。
ぐしゃり、と肉が軋む。
白い肌が裂け、内側から紫色の装甲が露出していく。
花弁模様の刻まれた、禍々しい外殻。
美しかった女の輪郭は崩れ落ち、そこに現れたのは、悪夢のような異形のAKUMAだった。
「っ……!」
クロウリーの顔から、血の気が引いていく。
エリアーデ――否、AKUMAは、ゆっくりと宙へ浮かび上がった。
「せっかく、ずっと騙せてたのに」
その身体の奥で、囚われた魂が苦しげに震えている。
「人間って、本当に面倒」
ラビが鉄槌を構える。
アレンも左腕を構え直した。
私は、苦しそうにエリアーデを見上げるクロウリーを見る。
その瞳は、壊れそうなほどの絶望に染まっていた。
「……騙すつもりだったのよ」
エリアーデの声が、冷たく書庫へ落ちる。
次の瞬間だった。
彼女の身体が、一気にクロウリーへ迫った。
鋭い爪が、月光を裂く。
「上手く飼い慣らして利用してやるつもりだったけど、もういいわ!!」
轟音。
クロウリーの身体が吹き飛び、壁へ叩き付けられる。
「お前をエクソシストにさせるワケにはいかないんだ!! 殺してやる!!」
狂気じみた叫びが、古城の奥へ響き渡る。