第17章 【第十六話】吸血鬼退治と三人の距離~クロウリー編①
私は無意識に胸元を押さえる。
「……何かいる」
その瞬間だった。
ぞわり、と。
背筋を撫でるような視線。
「!」
私達三人は同時に振り返った。
ラビが反射的に私の前へ半歩出る。
庇うように、ほんの僅かに肩が前へ出た。
戦闘前の顔だった。
アレンも左手を構え、霧の奥を睨む。
霧の向こう。
何かがいる。
気配だけが近付いてくる。
速い。
異常な速度。
「来る!」
次の瞬間。
黒い影が視界を裂いた。
「っ!?」
速過ぎて見えない。
影は私達の横を通り抜け、そのまま後方の村人達へ飛び込んだ。
「ぎゃあああああっ!!」
悲鳴。
村人達が恐慌状態で逃げ惑う。
「フ、フランツが!!」
「フランツが殺られたぁぁ!!」
「出た!! アレイスター・クロウリーだァァァ!!」
霧の向こう。
そこにいたのは――
一人の男。
青白い肌。
異様に長い牙。
そして。
村人の首筋へ噛み付いている。
血が滴る。
アレンとラビが同時に目を見開いた。
「……ウソだろ」
「マジで吸血鬼!?」
クロウリーがゆっくり顔を上げる。
真っ赤な瞳。
口元を血で濡らしたまま、こちらを見る。
村人達が悲鳴を上げて逃げ出した。