第16章 【第十五話】順番待ちの恋
その日も、書庫室は妙に静かだった。
ティファは机に広げた本へ視線を落としていた。
けれど、文字が少しも頭へ入ってこない。
何度も同じ行を目で追っているのに、意味だけがすり抜けていく。
「……ティファ?」
不意に名前を呼ばれる。
顔を上げると、アレンがいた。
「さっきから全然ページ進んでません」
困ったみたいに笑っている。
ティファは思わず視線を落とした。
「……そんなことないわ」
「ありますよ」
即答だった。
アレンは向かい側へ腰掛ける。
机を挟んだ、静かな距離。
そのまま数秒、ティファを見ていた。