第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
車輪の音が、急に大きく聞こえた。
ブックマンは資料から顔を上げない。
けれど、紙をめくる手が一度だけ止まったように見えた。
ラビは暫く私を見ていた。
それから、ふっと口角を上げる。
「ティファって、結構怖いこと言うんだな」
「そう?」
「出会って数日でそこまで見られると、オレの立場がねぇさ」
冗談めかした声音。
けれど、笑いの奥に僅かな硬さが混じった。
私は視線を窓の外へ戻す。
「あなたの笑顔の裏側を覗こうとすると、少しだけ気が張るのよ」
「それ、警戒されてるってこと?」
「そうかもしれないわね」
正直に答えると、ラビは数秒黙った。
やがて、肩を竦める気配がする。
「そりゃ残念。もっと好感度稼いどくべきだったなぁ」
「食堂へ案内してくれたことには、感謝しているわ」
「そこだけかよ」
思わず、ほんの少しだけ口元が緩んだ。
隣で、ラビがこちらを見る。
その目に浮かんだのは、探る色ではなく、僅かな驚きだった。
「……笑うと、やっぱ可愛いな」
「軽い言葉で誤魔化さないで」
「本心なのに」
ラビは笑った。
今度の笑い声は、少しだけ自然に聞こえた。