第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
駅のプラットフォームには、黒い煙を吐く重厚な蒸気機関車が停まっていた。
空は低く曇り、冷たい風が団服の裾を揺らしている。
汽笛が響くたび、胸の奥がわずかに震えた。
これまで師匠と旅をしていた時にも、何度も列車には乗った。
けれど、今日は違う。
師匠は隣にいない。
アレンもいない。
自分の名前で与えられた任務へ、自分の足で向かうのだ。
客車の狭いコンパートメントへ入ると、ブックマンは早々に窓際へ腰を下ろし、資料の束を広げた。
私は向かいの席へ座る。
その隣へ、当然のようにラビが腰を下ろした。
「……向かいが空いているでしょう?」
「じじいの隣より、ティファの隣の方が旅が楽しくなりそうだから」
「任務でしょう」
「任務だからこそ、気分は大事なんさ」
笑いながら答える声は、どこまでも軽い。
列車がゆっくりと動き出す。
窓の外の景色が、灰色の線になって流れていく。
暫くは、車輪が線路を刻む音だけが続いていた。
けれど、隣から向けられる気配が消えることはなかった。