第14章 体育祭・前日談
体育祭の概要が発表された翌日、雄英は早くもざわついていた。
「学年対抗ってマジかよ!」
「優勝学年にご褒美あるらしいぞ!」
そんな中、競技一覧の中でひときわ話題になっていたのが――二人三脚。
そしてその組み合わせ表が貼り出された瞬間、空気が一瞬だけ変わる。
3年生チームの欄。
ユカリ + 天喰環
「……あれ?」
「え、そこ組むの?」
周囲がざわつく。
ねじれはその紙を見て、ぱっと笑った。
「ねぇユカリ!これ絶対おもしろいことになるよね〜!」
「え、そうかな?」
ユカリは紙を見ながら不思議そう。
「…………」
顔には出ていないが、明らかに嫌な予感がしている環。
ねじれは楽しそうに指をくるくる回す。
「だってさ〜、爆豪くんと轟くん、絶対嫉妬するでしょこれ〜!」
「……しないと思う」
環は否定するが、説得力はない。
「いや絶対するって〜!」
ねじれは笑いながら言い切る。
「だってあの二人、ユカリのことになると分かりやすいもん!」
「……そうかなぁ?」
苦笑するユカリは、まだ半信半疑だった。
***
体育祭の話題が広がるにつれて、校内では妙な“羨望ブーム”が起きていた。
二人三脚のペア、それは後夜祭で行われるダンスのペアでもある。
それすなわち、ユカリのダンスの相手は環になるということだ。
「天喰先輩いいなぁ……ユカリ先輩と二人三脚とか」
「しかもダンスも同じペアとか勝ち組すぎるだろ」
「優勝確定じゃん」
廊下の中心で、一人だけ表情が死んでいる男・天喰環。
その目は本気で疲れている。
(あの二人と同じ空気になるの、普通に修羅場だろ……)
頭の中にはすでに体育祭の映像が浮かんでいる。
爆豪勝己の圧。
轟焦凍の静かな圧。
そしてその中心にいるユカリ。
それに巻き込まれている自分。
(無理だ……)
詰んでる未来しか見えない。
「……俺、当日生きて帰れるか?」
環は重いため息を吐いたのだった。