第16章 体育祭・後日談
翌朝の雄英高校。
校舎へ入った瞬間から、聞こえてくる話題はひとつだった。
「昨日やばかったよな!?」
「借り物競争見た!?!?」
「“運命の人”は伝説だろ!!」
廊下も食堂も教室も、どこへ行っても体育祭の話で持ちきりだった。
特に盛り上がっているのは、やはりあの場面。
ユカリに同時に手を差し出した、爆豪と轟。
「公開告白じゃんあれ!」
「しかも先輩、二人とも手取ったのやばかった!」
「実況もテンションおかしかったし!」
女子たちは朝から大騒ぎ。
男子たちも興奮気味だ。
***
1年A組。
教室に入った瞬間から空気が騒がしい。
「おはよー!」
「いや昨日マジで面白すぎた!」
切島と上鳴が朝から盛り上がっている。
だが。
二人は途中で気づく。
「……ん?」
「なんか今日、轟静かじゃね?」
教室後方。
轟は席に座ったままスマホを見ていた。
しかも表情がやたら柔らかい。
「………」
静かに画像を拡大。
保存。
また見る。
完全に昨夜の“小学生ユカリ写真”を見返していた。
「轟、顔ゆるんでるぞー」
切島が言う。
轟は普通に答える。
「可愛い」
「隠す気ゼロ!?」
その横。
爆豪は机に突っ伏している。
だが、耳まで赤い。
上鳴が小声で言う。
「……あれ絶対写真見返してるよな」
「あはは……」
出久は苦笑した。
その時。
教室の窓の外、渡り廊下を歩く3年生たちの姿が見える。
中心にはユカリ。
ねじれと笑いながら歩いている。
その瞬間。
爆豪、即起きる。
轟、即視線を向ける。
速すぎる。
A組全員、慣れた顔。
「あ、起きた」
「反応速度すご」
ユカリは窓際のA組に気づいて、自然に笑って手を振る。
「おはよー!」
それだけ。
ただそれだけなのに。
爆豪、死亡。
轟、静かに停止。
切島が笑いながら肩を叩く。
「お前らほんと分かりやすいな!」
上鳴も爆笑。
「昨日からずっと恋愛漫画なんだよ!!」
その頃3年側では。
ユカリが「なんか今日ずっと見られてる気がする……」と首を傾げていた。
ねじれはニコニコ。
ミリオは笑いを堪えている。
そして環だけが遠い目をしていた。
(……写真送るんじゃなかった)