第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
――ドォンッ!!
激しい衝撃に、鵺の翼が大きくしなった。
けれど、姑獲鳥は電撃をものともせず、さらに爪を押し込んでくる。
『シねェェェッ!!』
姑獲鳥がもう片方の腕を振り上げた、その瞬間。
鵺は爪を受け止めたまま、空いている翼でその腕を横から打ち払った。
狙いを逸らされた爪が、すぐ脇のコンクリートの柱に突き刺さる。
――ガガァンッ!!
柱が砕け、白い粉塵が一気に舞い上がった。
そのほんの一瞬の隙を突いて、恵くんが崩れた結界のこちら側へと飛び込んできた。
「!!」
「……っ、恵くん……!」
手を伸ばすより早く、強い力で抱き寄せられた。
恵くんは私を胸に抱え込むと、床を蹴って大きく後方へ跳んだ。
着地と同時に体勢を崩し、二人でもつれるように床を転がる。
直後、さっきまで私がいた場所を姑獲鳥の爪が抉り取り、大量の衣類が紙屑のように引き裂かれて舞い上がった。
恵くんが私に覆いかぶさるようにして盾になってくれている。
その背中に腕を回し、必死にしがみついた。
あったかい。
恵くんだ。
恵くんに、また会えた。
「……っ、怪我は」
「な、ない……っ、大丈夫、だよ……」
自分の声が、ひどく震えているのが分かった。
それでも、声を出して答えられたことが嬉しくて、背中に回した手に力を込める。
恵くんは肩で息をしながらも、私の頭を庇うように片手で強く抱きしめ、立ち上がりざまに鋭い視線を前方の姑獲鳥へと向けた。
『……返セ……!!』
粉塵の向こうで、姑獲鳥の濁った瞳がギロリとこちらを睨みつけた。
抱き合う私たちを見て、その全身から噴き出す呪力がさらに黒く膨れ上がる。
『ワタシの、子……! オマエには……渡サナイ……ッ!!』
巨大な翼を広げ、姑獲鳥が弾丸のように迫る。
さっきよりも速い。
恵くんが印を結び終えるより早く、黒い翼が視界いっぱいに広がった。
「恵くん、危ない!!」
鋭い爪が、私たちの頭上へ振り下ろされる。
恵くんは私を庇うように抱き込んだ、その時だった。
「――そこまで」
私たちの前に、五条先生が立っていた。