第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**
「……ちょっと待ってろ」
立ち上がって、を背後へ庇う。
ノブに手をかけ、慎重にドアを開ける。
「…………」
廊下には誰もいなかった。
左右を見ても、人影はない。
……気のせいか?
念のためもう一度廊下を見回してから、扉を閉める。
「大丈夫だ。たぶん、なんか倒れただけだろ」
「……そ、そっか」
はこくんと頷くと、慌てたように服の乱れを直した。
「……」
「わ、私、帰るねっ」
こっちを見ないまま、早口で言って、俺の横を通り抜けようとする。
それを見た瞬間、勝手に手が伸びた。
「えっ……んっ――」
引き寄せて、また唇を塞いだ。
さっきまでのことを、もう一度思い出させるように。
唇を離すと、は驚いたように目を見開いて、何も言わず俺を見ている。
俺も、目を逸らせなかった。
「早く……俺のこと好きになれよ」
何言ってんだ、俺は。
答えを待つとか、急かすつもりはないとかカッコつけてたくせに。
「…………」
は何か言おうとしたのか、唇がかすかに開いた。
けれど、声までは出てこない。
代わりに、は前髪に触れて、ぎこちなく視線を逸らした。
困らせた。
でも、今さら取り消せるわけもない。
「……っ、おやすみっ! また明日」
逃げるみたいにそう言って、は小走りで廊下を離れていった。
「……ああ」
返事をする頃には、もう背中しか見えなかった。
角を曲がって姿が見えなくなるまで見送ってから、部屋へ戻ろうとした。
その時、ふと足元に目がいった。
ない。
部屋に入る直前、が落としたはずの本がどこにもない。
さっき扉を開けた時は気づかなかったが、確かにここに落ちていたはずだ。
誰かが、ここを通って拾ったのか?
今日は、先輩たちも虎杖も出払ってるはず――。
「……まさか」
𓂃 クロユリは君を離さない 𓂃
── to be continued.