第3章 【土方】想うが故の
「小腹が空きましたね」
土「メシでも食ってくか。もう帰るしな」
と土方は日が暮れ始めた江戸の街を見回り中だった。2人は武州時代からの仲で、お互いに“友”や“仲間”よりも深い間になっていることを理解している。
しかし、真選組という立場上いつどうなるかわからない。それ以上踏み込むことができなかったのだ。
「あれ、こんなところに屋台ありましたっけ」
は道端に一つの屋台が出ていることに気づいた。昨日まではここには何もなかったはず。しかし、屋台だから、と何も疑問に思わなかった。
それが罠だとは知らず。
「いらっしゃい、おでんはいかがですか」
土「おいオッサン、マヨネーズはあるか?」
入店前にマヨネーズがあるか聞く土方。無かったらここを去るつもりだろうか、それとも自前のマヨネーズを出すつもりなのだろうか。
そんな視線を送っていると、土方に小突かれた。
土「どうすんだ、食ってくのか?」
「マヨネーズは?」
「ええ、ありますよ。私もマヨネーズが大好きでしてね、たくさん用意しております」
土方は先にその話を聞いていたようだ、店主とは話が合いそうだ、なんて嬉しそうにしている。
せっかくだから、と屋台でご馳走になることにした。
土「オッサン、マヨネーズ1本」
店主「はいよ」
「うげ・・・」
店主はマヨネーズの注文を受けると、ドン、とテーブルの上にマヨネーズのチューブを置いた。そして土方はおでんにマヨネーズを山盛りにかけるとズルズル食べ出していた。
昔からのことなのに、なぜ土方が大量にマヨネーズを食べる姿は見慣れないのだろうか。いや、毎回胃もたれをしているだけなのかもしれない。
土「お前も食えよ」
「マヨなしで」
店主のおじさんにいくつかおでんをお願いする。おじさんにもマヨネーズを勧められたが断った。
土方がマヨネーズ一本分を使い切ると、2人はお店を出て屯所へ帰った。
店主「・・・」
帰っていく2人の背中を、店主は口角を上げ見つめていた。