【HUNTER × HUNTER】愛されすぎて困ってます
第1章 ハジマリ
「今日からここが、お前の職場だよ」
抑揚のない無機質な声が、殺風景な部屋に反響する。 薄汚い布切れに身を包んだわたしは、目の前に立つ“彼”のことを、何も知らない瞳でまっすぐ見上げ、浮かんだ疑問を口にした。
「しょくば、って……なに……?」
「知らないならいいや。 説明するの面倒だし」
「……。」
彼の突き放すようなその言葉を耳にした瞬間、彼にとってのわたしは、手間をかける存在ではないのだと分からされた。 肩にかかるほどの黒髪は、窓から差し込む月明かりに照らされて艷めき、影になっている表情には一筋の光さえ感じない。 彼はゆったりとした所作でわたしに近付くと、大きな手のひらを広げ、顔を覆うように五指を触れさせた。
「お前が覚えておくのはただひとつ。 オレの命令は絶対。 逆らえば殺す。 ……分かった?」
「……、わかった」
指先から伝わる気配に、本能が告げる。
(このひとは、こわい。)
ツーっと伝う冷たい汗に、指の隙間から見えた彼の瞳の底の深さに、わたしは幼いながら、もう二度とここから出ることは叶わないのだろうと悟った。