第1章 記録:謎の部屋(プロローグ)
「めーぐみ!」
語尾を長めに弾んだ声で伏黒恵の背後から声を掛けたのは、1年生の担任である五条悟だった。
五条の声を耳にした伏黒は、ダルそうな雰囲気で五条に振り向いた。
「···、なんスか?」
こんなに楽しげな五条の声は、この後に待ち構えるであろう展開に嫌な予感しかしない。
「それがねー、ちょーっと厄介な案件が来てね、それを恵にお願いしようってわけ!」
「···」
「ほらほら、そんな嫌なそうな顔しないで、で、ペアは二年のに頼んであるから、二人でサクッと調査に行ってきてよ」
「···、祓いに行くんじゃなくて、調査ですか?」
「そ、なんでも"白い部屋"って言われてる部屋に、必ず男女ペアになった術師が囚われるらしいんだけど···不思議な体験をさせられるらしいんだ。部屋にはモニターが壁にかけてあって、そこに指示された通りに行動しないとドアが現れないらしくてね」
昨日の任務帰りに、伏黒は後部座席にどっかりと座りながら伊地知がそんなような事を言っていたのを脳裏に思い出していた。
「(そういや、この間伊地知さんがそれらしい事言ってたな)」
「その出された指示も"膝枕"や間接キス"やら、男女の恋人がするようなお題らしい。そこで、是非2人にって思ってね」
「はぁ!?···いや、何で」
冗談じゃないと講義の声をあげようとした瞬間、五条の顔が伏黒の目の前にズイっと近づいた。
口元にそれはもう良い笑みを貼り付けて。
「何でもかんでも···の事好きでしょ、恵は」
五条の人差し指が、伏黒の唇に触れた。