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弥栄

第11章 密事



責めることではない。だから詰問はしたくない。
けれど、知りたい。だが一度知りたがれば小枯を縛ってしまう。

縛るのは簡単だ。鬼鮫にすれば他愛ないことだ。人を縛ろうとしたことはないが、やろうと思えば造作ない。
それが鬼鮫には、"わかる"。

鬼鮫は小枯が話すのを待ちたいと思った。

背中に回された手の、しがみつく縋りつく正直さを信じたいと思った。いずれ打ち明けて、共にしてくれるであろう苦痛を小枯は今自分の中で整理している。整理して、向き合って、自分で決めようとしている。

そのいずれを待ちたい。
出来れば。

万一小枯が情に流されて経巡に残ると言い出せば、その限りではない。鬼鮫は力づくで小枯を連れ出す。

鬼鮫は小枯を抱きながら、この人を抱き締めるのは一体何度目だろうと思い巡らせた。
出会ってまだほんの三日。自分ののめり込み方が空恐ろしい。

ふと小枯と目が合った。

切れ長で、深い二重の、隈の浮いた目。諦観したように静かで穏やかで、けれど曲がらない目。

改めて小枯を見て、鬼鮫はほんの一時息を飲んだ。

守りたいのに突き放されるような、突き放されているのに手を伸ばされているような、我ながら測りかねる気持ちに襲われて鬼鮫は小枯の額に、自分の額を重ねた。

「…そんな目で見るんじゃありませんよ。あなたを破戒させたくなってしまう」

「え?変な目をしてたか?」

瞬きして目の下の隈をなぞる様に拭った小枯が他愛なく可愛くて、鬼鮫はいっそやりきれなくなった。

ここからまた茅場と話さなければならない。あの食えない宮司は里の関わる企てだけではない含みを持たせていた。

ふたつの命題とは何か。
いずれ小枯が関わっていることに間違いはないだろう。関わっていたとしても、この人を譲ることは出来ない。置いていくこともしない。

鬼鮫は腕を弛めて小枯を座らせた。

「ー大枯さんたちが来てまた話をすることになりますが」

「ああ。宮司が協力するというのなら計画は練り直すことになるな」

「宮司は和良と繋ぎをとれる?」

「勿論だ。ー何なら大名とも取れなくはないだろうよ」

小枯は目の下を拭いながら首を傾げた。

「宮司は捕物舞の名手だ。望まれて大名の前で舞ったこともあると聞く」

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