第4章 近づいて
隣ではさやかが顔を赤くして手で覆ったっきりしばらくの沈黙が続いていた。
これは何かを話すべきかと思った義勇はおもむろに口を開いた。
「その、花凪野は好きな人とか…いないのか」
「好きな人、ですか…?」
さやかは思わず覆っていた手を退け、不思議そうな顔で尋ねた。
いきなりこんなことを聞くのは気持ちが悪いかもと義勇は思ったが、今更どうしようもない。
「俺は…慕っていると言っていいのかわからない人がいる。その人は随分前に関わりのあった人で、最近ずっとその人の夢を見るんだ。」
「そうなんですね…?」
「問題なのは、もうその人と会えない、かもしれないことだ。いや、もしかしたら会えているのかもしれないが……。自分でも本当に好きなのか、そうだとしたら何が好きだったのか思い出せず苦しいんだ。」
義勇は少し俯いて自分の指先を見つめた。