第6章 理解できねー
スマホのパズルゲームが一段落し俺が横を見ると、隣の席の佐藤ゆめはまだ眠っているようだった。
机の上に置いたカバンを枕にし、無防備な寝顔をこちらに向けて。
(こいつ帰りのホームルームの時からずっと寝てたよな)
もうホームルームはとっくに終わり、教室の人影もチラホラだ。
起こしてやった方がいいんだろうか?
でもこの気持ち良さそうな寝顔を見ていると、そのままにしておいてやりたくなる。
…
ふと視線を感じ、廊下に目をやると一人の男がこっちを見ていることに気がついた。
(あの前髪長い男…確かこいつの彼氏…。ヤッベ寝顔見てたの気づかれたか?)
俺は慌ててスマホに目を戻す。
その男は教室にスタスタと入り込み佐藤の横に立ち止まり見下ろす。
そして佐藤の髪をつかみ引っ張った。
「ぎゃんっ!痛いっ」
悲鳴をあげて飛び起きた佐藤は頭を押さえてキョロキョロと辺りを見渡す。
「帰るよ」
男は無表情に一言だけ言い捨て、またスタスタと歩きだす。
「あん、逢坂くん。待ってぇ」
佐藤は嬉しそうにカバンを抱え、そいつを追いかけた。
…
理解できねー。
fin