第115章 君は誰…冨岡義勇【R微】
ゆきは、義勇から涙を隠したくて、その場をそっと離れた。
色鮮やかな花が咲き誇る場所へ移動し、溢れ出る涙を袖で拭いながら、一人静かに花を摘む…。
どうしてだろう…今日は、無性に無一郎くんが恋しい…
胸を突く切なさに押し潰されそうになりながら、ゆきはただひたすらに手を動かしていた。
ーー
その頃、無一郎は一人で街外れの川辺を訪れていた。
普段なら美月と行動することが多いが、最近見つけた綺麗な花畑で、今日は静かに一人になりたかったのだ。
だが、先客の姿が見えた。邪魔をしては悪いと向きを変え、立ち去ろうとしたその時…。
爽やかな風とともに、甘い香りが鼻をかすめた。
酷く懐かしく、そして愛おしい香り…。
思わず振り返ると、花を摘む人の姿が目に入る。
なぜだろう。まるで見えない糸で引き寄せられるような感覚に囚われ、足が勝手にその人の元へと歩み寄っていた。
近づくほどに胸が高鳴り、ぎゅっと締め付けられるように苦しい。
何…?この感覚は…
カサリと足音が近づく気配に、ゆきはハッとして慌てて涙を拭おうとした。
義勇さんに泣いている姿を見られるわけにはいかない…
だが、後ろからすっと重なった影は、どこか違っていた。
さらさらと風にそよぐ、長い髪の影……。
ゆきは息を呑み、胸の鼓動を激しく打ち鳴らしながら、ゆっくりと振り返った。
澄んだ空のような瞳…長く揺れる綺麗な髪…私がずっと求めていた人…
「む、無一郎くん……?」
会いたかった相手が、目の前に居る…。ゆきの目からポロポロと熱い涙が溢れだす…。
じっと不思議そうな表情で、無一郎はゆきを見つめ続ける。
「会いたかった…無一郎くん…」
ゆきが、無一郎の側に歩み寄ろうとしたその時…残酷な言葉が、ゆきの心を鋭く刺した。
まるで…とどめの一撃のように…冷たく…深く…心に突き刺さる…
「君は誰…?」
終