第25章 『酔い×理性崩壊』土方歳三編*
その夜は、小さな祝宴だった。
任務の成功と、ひさしぶりの穏やかな夜を祝って――
屯所では簡素ながらも、笑いの絶えない酒宴が開かれていた。
「これ、美味しいですよ。飲んでみます?」
「おう、ありがとうな、ももかちゃん!」
「えへへ、みんな楽しそう……」
わたしは杯に注がれた淡い琥珀色の飲み物を、甘いものだとばかり思って――ひと口、口にした。
(あれ?これって……)
ほんのりとした苦み。けれどその奥に、ふわっと広がる甘さ。
まるで蜜のような香りに、くすぐられるような喉ごし。
(おいしい……)
そして、そのまま、もうひと口――
もうひと口。
――
「……ふふ……ん、あっつい……」
ぽわんと火照った顔で、わたしは着物の胸元に手をかけていた。
ぐらつく足取りのまま、着物をはだけさせて、うっすら汗ばんだ素肌を晒して――
「なんだあれ……」「まさか酔ってるのか?」「ももかちゃん……?」
ざわつく空気の中、鋭く視線を向ける男がいた。
――土方歳三。
「……何してやがる、おまえ……」
彼は静かに立ち上がり、そのままわたしの腕を掴んで引き寄せた。
「っ、ひじかたさん……」
「着物、戻せ。……って言って、聞く耳もねぇな」
そのまま抱きかかえられるようにして、宴席をあとにする。
誰かの声が後ろから聞こえたけれど、土方さんは何も答えず、ただ早足でわたしを寝所へと運んでいった。
—
「……おまえ、何を飲んだ」
「ん、なんか……甘くて、おいしいやつ……」
「酒だな。……酔ってる。……しかも、相当……」
「んふふ、なんかね、からだがぽかぽかして、へんなの……」
着物がさらにはだけ、汗ばんだ肌が晒されていくのを見た瞬間――
土方さんの目の色が変わった。
「……これ以上、他の男に見せるな」
「でも、わたし……
土方さんに……見せたいよぉ……」
「……っ」
その一言が、彼の理性を吹き飛ばした。