第24章 『誘惑×余裕崩壊』永倉新八編*
「ももかちゃん、今日もかわいいねぇ。
そんな顔で近づかれると、ドキドキしちゃうよ?」
いつもの軽い口調でそう言いながらわたしの頬を指先でつついたのは、永倉新八さん。
女慣れしてて、口も達者で。
でも、いつも優しくて――
近くにいるだけで、心がふわっと温かくなる。
(……でも、きっといろんな女の人に同じこと言ってるんだろうなぁ)
そう思いながらも、わたしは彼の隣に座って、いつものように他愛ない話をしていた。
「今日は髪、いつもと違う結び方してるんです。……気づきました?」
「……気づいたよ。さっきからずっと、見ないようにしてたんだけどなぁ……」
「え?どうして?」
「かわいすぎて、理性なくなりそうだから」
「……っ!?」
(やっぱり、軽い……けど、なんかドキドキする……)
わたしはごまかすように笑って、新八さんの袖を何気なく引いた。
「ねえ、新八さんって……ほんとは、どんな人が好みなんですか?」
「……そんなこと聞いて、どうするの?」
「ん……参考までに?」
くすっと笑って見上げた瞬間――
永倉さんの目が、ふと鋭くなった。
「……ほんっと、無自覚だよね」
「えっ?」
「そんな目で見上げて、袖掴んで……
俺のこと煽ってるの、自覚ないの?」
「煽って……ない、つもりですけど……?」
「……ああ、ダメだ。無理。今日は、もう無理」