第22章 『酔い×嫉妬』藤堂平助編*
その日は、屯所でちょっとした祝いの席が開かれていた。
わたしは、皆と一緒に湯飲みに注がれた琥珀色の液体を、何気なく口にしていた。
(……ちょっと苦いけど、甘くて美味しい)
ほんのり火照る身体に気づかずに、もう一杯、もう一杯……と飲んでしまった。
「ももかちゃん、それ……」
沖田くんの声が聞こえた気がしたけど、頭がふわふわして、うまく耳に入ってこない。
「ん~……なんか、ちょっと暑い、かも……」
する、と帯をゆるめ、襟元をぱたぱた仰ぎながら、よろよろと立ち上がる。
「ももかちゃん!着物、着崩れて――」
ざわっと広がる空気の中、
一人の男の目が、射抜くように光っていた。
――藤堂平助。
「……」
彼はわたしの姿を見るなり、それまでの笑顔が消え、一瞬で立ち上がって、わたしの腕を掴んだ。
「っ、へいすけく……」
「――来て」
そのまま皆の視線を振り切るように、人気のない奥の一室へと連れていかれた。