第56章 羽織る温もり、奪われた光 ※
ついこの間まで、満開で空を覆っていた桜は、もうほとんど散っていた。
淡い花びらは地面に落ち、踏まれ、風に流されていく。
緑谷とが雄英を去ったのは、4月だった。
新年度の始まり。
本来なら、未来に向かって進むはずの季節。
けれど2人は、逆方向へ歩き出した。
緑谷は、オールフォーワンの手がかりを追いながら、休むことなくヴィランと“ダツゴク”を捕らえ続けていた。
昼も夜もなく、次から次へと戦場を渡り歩く姿は、もはや一人の少年のものではない。
、エンデヴァー、ホークス、ジーニスト。
らは緑谷と少し距離を取り、1日に1度だけ接触し、治癒と疲労回復を施しながら、ヒーロー活動を続けていた。
常に誰かが前に立ち、誰かが後ろを警戒する。
戦闘になれば、3人が壁になり、を守った。
休憩はほとんどなかった。
救えなかった命を思えば、当たり前だと思った。
ホークスは、いつもの少し後ろを飛んだ。
守るため。
それ以上に、離したくなかったからだ。
傷だらけのが、それでも前を向こうとするたび、胸の奥が締めつけられる。
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夜明け前、空き家でほんの短い休息。
は座ったまま、膝を抱えていた。
眠ってはいない。
ただ、目を閉じているだけ。
ホークスは、何も言わずに隣へ腰を下ろす。
距離は近い。
でも、触れない。
――触れたら、壊れてしまいそうだったから。
ホ「…寒くなか?」
優しい声。
は首を振る。
「うん…」
肩が小さく震えている。
ホークスは、一瞬だけ迷ってから腕を回す。
抱きしめる、というより包む。
ホ「…大丈夫。俺がおる」
の額が、ホークスの胸に触れる。
心臓の音。
規則正しくて、確かに“生きてる”音。
「…啓悟……」
名前を呼ばれて、ホークスの喉が詰まる。