第55章 告げられる想い、壊れていく心 ※
次に向かったのは、A組の寮。
今まで見たことのないほど、焦った足取りで。
A組の寮に足を踏み入れた瞬間。
切「相澤先生っ!緑谷が……手紙を!」
相「……なんだと?」
嫌な予感が、さらに重なる。
相「……緑谷も、いないのか」
空気が、凍りついた。
そこにいたA組全員が、息を呑む。
轟「緑谷……"も"…?」
轟の声が、かすれる。
視線が、一斉に相澤の手元に集まった。
麗「……それ……手に持ってるのって……」
八「……ダイヤのネックレス……」
爆「のだ……」
爆豪が、低く言った。
その瞬間。
全員の中で、同じ“最悪の答え”が浮かび上がる。
相「……が……居ない」
相澤の声は、信じられないほど静かだった。
相「どこにも……居ないんだ……」
その言葉と同時に。
A組から光が消えた。
色が、音が、全部、抜け落ちる。
「……」
誰も、言葉を出せない。
轟「……3日前」
ぽつりと、轟が言った。
轟「俺に……会いに来た」
爆豪が、歯を噛みしめる。
爆「……一昨日、俺ンとこ来た」
相「………………」
相澤は、何も言えなかった。
ここにいる3人は、同時に理解してしまった。
――あれは、別れだった。
なのに、違和感は確かにあったのに。
不安定だからだと、勝手に理由をつけて。
自分がそばにいればいい。
支えればいい。
そう思い込んで、気付けなかった。
結果が、これだ。
静まり返ったA組の寮。
誰かが泣くわけでもない。
誰かが怒鳴るわけでもない。
ただ、取り返しのつかない喪失だけが、そこにあった。
相澤は、ネックレスを強く握りしめた。
指の間から、光がこぼれる。
相「……」
教師として。
大人として。
そして――一人の男として。
その背中は、初めて、はっきりと揺れていた。