第55章 告げられる想い、壊れていく心 ※
相澤は、の唇に、そっと触れた。
さっきよりも、長く。
さっきよりも、必死に。
治癒でも、回帰でもない。
ただ、「戻ってこい」と伝えるためのキス。
相「愛してるんだ……」
声が、震える。
相「……だから…頼む」
唇が離れても、額は離さない。
相澤は、の後頭部を抱え、泣くのを、必死に堪えていた。
教師としてじゃない。ヒーローとしてでもない。
ただ、一人の男として。
相「……」
その時、の指先が微かに、動いた。
相澤「……!」
息が、止まる。
次の瞬間、の喉が、かすかに鳴った。
「……しょ……」
聞こえるか聞こえないか、それくらいの、小さな声。
相「……いる」
即答だった。
相「……ここにいる」
の瞼が、ほんの少しだけ動く。
完全には、開かない。
それでも、相澤の胸に顔を擦り寄せるような、弱々しい仕草。
生きている。
それだけで、相澤の膝が震えた。
相澤は、を抱き締め直す。
さっきよりも、さらに、強く。
相「……独りで壊れるな」
は、答えない。
ただ、涙だけが、相澤の胸を濡らした。
その時、病室の扉が静かに開いた。
白い光の中で、は相澤の腕の中にいた。
抱き締められたまま、まだ震えが抜けきらない身体を預けて。
その光景を、扉の向こうから見てしまった人物がいた。
ホークスだった。
一瞬、時間が止まったみたいに、動けなくなる。
——間に合わなかった。
——でも、生きてる。
その二つの感情が、胸の奥で激しくぶつかる。