第55章 告げられる想い、壊れていく心 ※
深くない。
治癒のためでもない。
ただ、息を渡すみたいに。
短く、静かなキス。
相「……ほら」
もう一度、ゆっくり息を吸う。
の胸が、少しだけ、大きく上下した。
吐く、また、吸う。
繰り返すたびに、過剰に締め付けていた胸が、ほんの少しずつ、緩んでいく。
涙は、止まらない。
でも、息は——戻ってくる。
は、力が抜けたように、相澤に全体重を預けた。
相澤は、強く、強く抱き締める。
逃がさないように。
壊れないように。
相「……何も言わなくていい。泣いていい。…俺が、全部受け止める」
の喉から、ようやく声にならない嗚咽がこぼれた。
相澤の腕の中で、の呼吸は落ち着き始めていた。
浅く、細かった息が、少しずつ深さを取り戻す。
相澤は、離さない。
力いっぱい、壊れそうな身体を抱えたまま。
相「……戻ってきたな」
そう呟いた声は、自分自身に言い聞かせるみたいだった。
の肩の震えは、まだ止まらない。
でも、さっきまでの発作的な乱れはない。
大丈夫だ、落ち着いた。
そう、思った瞬間だった。
の身体から、ふっと、力が抜けた。
相「……?」
腕の中の重さが、変わる。
首が、だらりと相澤の肩にもたれ、支えがなければ、崩れ落ちそうになる。
相「……?」
呼びかけても、返事がない。
相澤の背中に、冷たいものが走る。
相「おい……」
の顔を覗き込む。
瞼は閉じられ、睫毛が、微かに震えるだけ。
呼吸は——ある。
でも、あまりにも、弱い。
相「…嘘だろ」
胸に耳を当てる。
——とくん、とくん。
確かに、鼓動はある。
なのに。
相「……やめろ」
声が、掠れた。
相「……行くな」
相澤は、の頬を包み、額を重ねる。
相「……頼む」
言葉が、喉で詰まる。