第55章 告げられる想い、壊れていく心 ※
相澤は、しばらくの間、を抱きしめたまま動かなかった。
泣き声はもう止まっている。
けれど、呼吸はまだ不安定で、肩が小さく揺れている。
「……消太…、さん……?」
小さく呼ぶと、相澤の身体が、ぴくりと反応した。
相「……」
ゆっくりと、腕が緩む。
それでも離れきれず、額が触れるほどの距離で、を見る。
相澤は、一度だけ目を伏せた。
相「……今まで」
低い声。
かすれて、掠れて、それでも真っ直ぐ。
相「……線を引いてた」
が、息を呑む。
相「職場の同僚として……」
相澤は、自嘲するように小さく笑った。
相「今の関係のままでよかった…気を遣わせたくなかった」
指先が、震える。
相「だから……言わなかった。…言えなかった。思ってないふりして……気づいてないふりして……」
相澤は、の頬に、そっと触れた。
触れるだけで、壊れてしまいそうなほど、慎重に。
相「……でも」
声が、詰まる。
相「……もう、無理だ。が……あんなふうに壊れて…血も……命も……全部、誰かのために差し出して…。それでも、立とうとして」
相澤の喉が、ひくりと鳴る。
相「……失いかけて、…それで、まだ……黙ってろって?」
相澤は、ゆっくりと首を振った。
相「……出来ねぇよ」
視線が、正面から重なる。
相「……好きだ」
の目が見開かれる。
短く落ちたその言葉のあと、相澤は一度唇を噛んだ。
相「……こんなこと言うつもり、なかった。言えば……困るって、分かってたから…。でも、全部背負わせるのも……嫌だった」
視線を逸らし、天井を見る。
相「……ヒーローってのは、勝手だ…。守るって言いながら……一番近くにいる人を、平気で傷つける」
小さく、息を吐く。