第54章 暴かれる真実、踏み潰される祈り
その日は、空気が異様に重かった。
警察とプロヒーロー。
それに加え、雄英高校ヒーロー科の生徒たち。
これまでにない数の人間が、一つの作戦のために集結している。
史上最大規模の一斉確保作戦。
敵ヴィラン勢力“超常解放戦線”。
その本拠地である群訝山荘と、ドクター殻木球大の潜伏先、蛇腔病院の2ヶ所同時制圧。
群訝山荘には、エッジショット班。
蛇腔病院には、エンデヴァー班。
そして、はエンデヴァー班の一員として、そこにいた。
隣には、相澤消太。
少し後ろには、マイク。
2人とも、言葉数がいつもより少ない。
冗談もない、軽口もない。
“脳無”という存在が関わる作戦だと、誰よりも理解している二人だった。
(……始まる)
これが、ホークスが一人で掴んだ情報の先。
あの夜の先。
そう思うと、胸の奥がわずかに軋んだ。
エンデヴァーを先頭に、病院に足を踏み入れる。
院内の潜伏員の案内により、ドクターの元へ足を進める。
エ「貴様か!」
その声の先。
白衣を着た、ひとりの老人。
医者。
その瞬間、の視界がぴたりと止まった。
(……え……?)
息が、詰まる。
吸えない。
吐けない。
肺が、凍りついたみたいに、動かなくなる。
(……知ってる……)
名前と顔写真は見ていなかった。
目の前のその人物は。
(……先生……?)
幼い頃から、知っている。
個性を生かせるよう、全力でサポートしてくれた人。
自分の血液が色んな人の役に立てるよう、今までもずっと、提供し続け関わりのあった人。
そのおかげで、見えないところでも、人を助けることが出来ていると、思っていた。
の記憶にあるのは、殻木先生だった。
嫌な予感が、背骨をなぞるように、全身へ広がる。
呼吸の仕方を、本気で、忘れそうになる。