第52章 奪われた夜、青い炎 ※
表向きには、ヒーロー社会は何も変わっていないように見えた。
だが、水面下では確実に、最悪へと近づいていた。
ホークスは、あの日を機に、敵連合の内部に深く食い込みながら、少しずつ、少しずつ、情報を積み上げていった。
そして、決定的な事実が浮かび上がる。
かつて、水面下で勢力を広げていた異能解放軍。
思想、資金、武装、人員。
そのすべてを抱え込む巨大組織。
その数、全国に十万以上。
敵連合は、その異能解放軍を完全に“傘下”へと置き、超常解放戦線と名を変えた。
象徴は、死柄木弔。
かつて未完成だった破壊衝動は、今や“指導者”としての狂気へと変質し、解放軍を丸ごと飲み込んでいた。
もはや、小規模なヴィラン集団ではない。
戦争が起きる規模。
ヒーロー社会を正面から叩き潰せる、一つの“国家”に近い存在。
さらにホークスは、もう一つの核心へと辿り着く。
オールフォーワンの片腕で、脳無を生み出している存在。
殻木球大。
通称、ドクター。
その人物の現在の拠点と実験施設の存在。
そして、大量の脳無が保管されている可能性。
自分は、まだ“向こう側の人間”として振る舞わなければならない。
一つでも不自然な動きをすれば、即座に消され、今まで積み重ねて来たものがゼロになる。
だからこそ。
慎重に、段階的に、情報を流していく。
それが、どれだけ心を削る行為でも。
ホークスは、息を吐いた。
ホ(……もう、引き返せないな)
敵連合は、想像以上に大きくなりすぎた。
そして、この先に待つのは。
避けようのない、全面衝突。
静かに始まる戦争の前の静けさ。