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【ヒロアカ】愛と癒しの代償【R18】

第52章 奪われた夜、青い炎 ※


静かだった。
空き家の中に、さっきまであった熱だけが、名残みたいに漂っている。

は、天井を見つめたまま、ゆっくりと息を吸った。
身体はまだ、自分のものじゃないみたいに重たい。

隣にいるはずの気配が、すぐそばにあるのに、触れられない距離がある。
荼毘は、無言だった。

煙草も吸わない。
炎も出さない。

ただ、の髪に触れない程度の距離で、座っている。

は、胸元に手を当てる。

心臓の音が、まだ少し速い。

(……来たのは、私なのに)

覚悟していたはずなのに。
分かっていたはずなのに。

それでも、胸の奥がひりつく。

ホークスの顔が、ふっと浮かぶ。

必死で。
苦しそうで。
それでも笑っていた、あの表情。

次に、相澤の静かな視線。
爆豪のまっすぐすぎる熱。
轟の、言葉にしない優しさ。

(……戻れるのかな)

そんなことを考えた瞬間。
荼毘の声が、低く落ちる。

荼「……怖かったか」

責めるでもない。
慰めるでもない。
ただ、事実を確認するだけの声。

は、少し間を置いてから、答えた。

「……怖かったです」

嘘は、つかなかった。
荼毘は、小さく笑う。

荼「だろうな」

それだけ。

でも、そのあと。
の指先に、そっと触れた。
力は、ほとんどない。

握らない。
引き寄せない。
離れないだけ。

は、その温度に、胸がきゅっとなる。

——優しい。

触れ方が。

ホークスと。
相澤と。
爆豪と。
轟と。

全部違うのに、根っこだけが同じだった。
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