第52章 奪われた夜、青い炎 ※
それが、いちばん怖かった。
「……荼毘……」
呼んだ声が、震える。
荼毘の口元が、歪む。
荼「そうやって呼ぶな」
一瞬だけ、苦しそうに眉が寄る。
荼「……俺だけの時は」
その距離が、ゼロになる。
額が触れそうなほど近くで、低く囁く。
荼「……いや、なんでもない」
唇が、触れる寸前で止まる。
逃げられる。
拒める。
それでも身体が強張って動かない。
荼「……なぁ」
息が、混じる。
荼「この前の続き、しようぜ」
その言葉が落ちた瞬間、の視界から、世界が静かに切り離された。
「んんっ…」
気づけば唇は重なっていた。
後頭部をしっかり固定され、生暖かい舌がの口内をねっとりと絡めとる。
怖い。
間違いなく、怖いはずなのに。
それでも、身体が拒まない理由が、には分からなかった。
まるで、昔から知っている相手に触れられているみたいで。
「や、め……んっ…」
否定の言葉を吐いても、身体は拒絶していなかった。
荼「はっ…んなこと言うなよ」
静かな部屋に2人のキスの湿った音だけが響く。