• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

【ヒロアカ】愛と癒しの代償【R18】

第47章 揺れる心、ほどける夜 ※微


爆豪はゆっくり立ち上がり、まだ力の入らないの手を無言で取った。

爆「……歩けるか」

その声は、泣き疲れた心を支えるには十分すぎた。

校舎へ戻る夜の道を、2人は肩が触れそうな距離で歩く。

は爆豪の腕に寄りかかり、時々ふらつくたび、爆豪が無言で支える。

その同じ頃。
薄暗い廊下の曲がり角の影に、ひとつの影が静かに立っていた。

ゆっくりと手を伸ばしたまま、触れられなかった空気を握るように。


──相澤だった。

ほんの十数分前。
が初めて見るほど弱った瞳だったから。
“待て”が喉まで上がったのに。

なぜか、その一言が言えなかった。
今日だけは、踏み込めなかった。
いつも当たり前のように掴む手を、掴めなかった。

なのに今、目の前には躊躇なくの腕を掴み、迷いも戸惑いもなく支えるその姿に、相澤の胸がわずかに軋む。

自分にはできなかった“踏み込み”を、爆豪はは当然のようにしてみせたのか。

引き止められなかった手が、服の裾を握りしめる。

悔しさでもない。
嫉妬だけでもない。
もっと深くて、もっと苦い感情。

相「………………」

声は出なかった。

ただ、遠ざかっていく2人の背を、影の中で見送ることしかできなかった。

が爆豪の腕に寄りかかった瞬間、相澤の肩がかすかに沈む。

その表情は、誰も知らない。

寮の入口前で、爆豪は手を離さずに立ち止まった。

爆「……今日はもう寝ろ。考えんな。泣くな。難しいことは……明日でいい」

夜風が静かに揺れて、の心に残った痛みだけが波紋みたいに広がる。

「……うん…。ありがとう」

爆豪はほんの一瞬だけ視線を落とし、そっと額に触れそうな距離まで顔を近づけた。

爆「……おやすみ、」

その背が消えていくまで、は動けなかった。

そして誰もいない角の向こうでは、相澤が見えない影のまま、静かにその場を離れていった。
/ 740ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp