第1章 辺 雪も溶ける
辺視点
「おい」
積もった雪と共に、その小さな肩が跳ねる。
「なにしてる」
仕事が忙しく、久々に兄さんの土地を踏めたと思ったら林の中に小娘が突っ立っていた。それも6〜7歳だろう。かなり小さい。
「こんなところにいると死ぬぞ」
くるっと振り返ったその顔立ちは、ここでは珍しかった。アジアだろうか。私の言葉がわからないのか、きょとんとしている。
「あ、えと」
「あー、にーはお」
「?」
…中国じゃないだと。出会ってきたアジア人には基本これで通じたのだが。
「…コンニチワ」
「こんにちわ!」
なるほど、これが正解か。
日本人。まさかこんな北の方に日本人のガキがいるとは、正直思わなかった。しかも迷子だ。
「親はどこだ」
「わかんない…」
自分のチビを見張っておくのが親の務めだろう。馬鹿か。
しかしこの娘、肝が座っているな。泣いたり私を拒んだらしない。
「お姉さんは、ろしあの人?」
「いいや、私はベラルーシだ」
「べ、べら……国?」
「ああ、隣だ」
なるほどと言った顔をしながら娘はにこにこした。
「私ね、今日で日本に戻るんだー」
「そうか。さっさと戻れ」
「でもねーもうちょっとここにいたいから、お母さんから逃げてきたの」
「…」
もうちょっとここにいたい→ロシアにいたい→ロシアが好き→
敵!!!!!!!!