第10章 悪夢の棲む家
「まあ、とにかく所長にやれと言われればやりますけどね。別の方法で調べ直してみます。なにか分かったら連絡しますから」
「安原さん無理なくね?」
「ありがとうございます結衣さん。にしても……」
そろそろと安原は結衣は近付き彼女の耳元で囁いてきた。
「お仕事中とはいえ、恋人といられるなんて羨ましい〜」
「や、安原さん!!何言ってるんですかもう!!」
「いやだってこの中で恋人同士なんて滝川さんと結衣さんだけでしょ〜。いいですねぇ〜ラブラブできるじゃないですか」
「仕事中なんです!!」
二人がそうはしゃぐように叫ぶのを少し離れた所から法生が見ていたが、面白くなさそうな顔であった。
恋人が他の男と親しそうにしているのを見て面白いや良い思いをする男はまずそういない。
法生は立ち上がると結衣の肩を引き、そして自分の方に寄せた。
「わっ、ぼーさん?」
「ほら、安原少年早く行きな」
「あら〜嫉妬させてしまったみたいですね?じゃあ、お邪魔者は失礼します」
安原は「触らぬ神に祟りなし」なんて言って笑いながら結衣の傍から離れた。
そして法生はまるで結衣の存在を確かめるように、まるでマーキングするように彼女の抱き寄せたまま腕を撫でてから顔を覗き込む。
「恋人のおにーさんがいるのに、他のおにーさんと近すぎるのはどーなのかな?お嬢さん」
「うっ……いや、浮気とかじゃないし……」
「俺は結構嫉妬深いよ?その変気をつけてくんなきゃ……」
法生は結衣の耳元で囁いた。
「お仕置しちまうよ」
低く囁かれたその言葉に結衣の顔が爆発しそうなぐらいに赤くなり、体も金縛りにあったかのように固まってしまった。
そんな彼女を見て法生は面白そうに喉を鳴らして笑っていたが、ナルの咳払いで直ぐに背筋を伸ばした。
あまり浮ついたことをしていると所長である彼に嫌味たっぷりな言葉を頂戴してしまい、挙句には追い出される可能性がある。
「滝川さんはお帰りにならないんですか?」
「俺向きの展開になってきたんで、もちょっと様子を見てる」
「──ぼーさん。窓ガラスの代わりに鏡を入れるとしたらどういう時だと思う?」
「なにイキナリ」
法生は突然何を言い出すんだという顔をしながら、髪ゴムを解いた。