第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
記憶が正しければ、私はただ一言。
「昂った」と言っただけだったはず。
なのにフツー、ここまでされるか?
それか、「らしくないことは言わないに限る」という教訓か?
紗恵には相手にされず、詩織にも見放されて。
“続けるくらいなら負けてもいい”と思い、降りたつもりの争いに引き戻され。
その結果、2人の腕の中で私が知ったことと言ったら、
『お前らの方が
よっぽど昂ってんじゃねぇーか!!』
と言うことだった。
こちらから特別弁解せずとも。
今の紗恵と詩織の高揚具合を見ていて、“天(私)のそれで太刀打ちできる”なんて思う人間は一人もいないだろう。
こいつらの言葉を借りるとしたら…
“ワクワクする”とか、“楽しくてしょうがない”とか。
「それを言うならお前らの方だろ」って。
今ならそれだけで、揃って私に抱き着き、離そうとしない2人のことを。
簡単に負かしてやることが出来るだろう。
しかし、私はもう1つ、知ることとなってしまった。
“勝つ”とか、“負ける”とか。
試合はとっくに終わらせた私の中に、いつからと知れず生まれていた闘争心なんて…
「「 だってワタシ/ウチは
ちゃんと楽しいもーん!! 」」
『なんか無駄に腹立つな!!』
紗恵と詩織が言ってみせたように。
2人にとっては、端から持ち合わせるほどのものじゃなかった、ということを。