第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
ここにいた。
“明らかな原因”。
本来、痛いはずがない詩織の抱擁。
しかしそれは、紗恵という別の存在が介入した途端に覆ってしまった。
そういう紗恵も、悪意とか悪気とか、そんなものは全くなくて。
寧ろ巻き込まれ事故にあった被害者と言った方が近いんだろう。
それでも、紗恵が顔をのぞかせている方の肩は…
真後ろにいる紗恵の顎が、これでもかと刺さっているんだ。
「ウチだって天の肩で顎痛いんだよ~?
お互い様だから我慢して~?」
『喋んなって!お前が口開くと
うるせぇーし痛ぇーんだよ!!』
そう、この状況は見た目以上に危険だ。
おかしな話だし、恐らく二度と聞かない話だと思う。
けれど、“口を開く”という至極当たり前の所作でも、今の紗恵なら二重で私に攻撃することが出来る。
チームメイトの“声”と“顎”が致命傷とか。
後世に語り継いだりでもしたら、とんだ笑いもんだ。
だけど、私が何を言おうとも、
「だって詩織がギュッ!ってするんだもーん!
あぁ~いってぇ~喋りづれぇ~」
紗恵はいつも通り、アハハッ!!と笑うだけで、まともに聞きやしない。
やっぱりうるさい。
あと痛い。
『つか詩織も退けよ流石に?!!』