第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
フリースローも。
愛華のシュートも。
私が劣勢の戦地へ身を投げたのも。
ゴール直下から投じた詩織のパスも。
全て史奈にスリーポイントを決めさせるために必要だった。
きっと初めから決められていたことだった。
私はシナリオに従っただけ。
愛華の筋書き通りに動いたにすぎない。
だったらそれはいつからだ。
いつから私たちは、愛華のシナリオに囚われていた。
誰かに知られることすら、出来ないはずだった本当の“本物”。
その時コートにいた選手の記憶の中でしか、存在できない真実。
そして私もその1人。
コートの上にいた私なら、なんとなく予想をつけられる。
そして今。
各々が相手チームの攻撃に備えて、ディフェンスにあたるこの場において。
私と同じ方に視線を向けてるが故に、コチラに背を向ける1人のチームメイトの背中を見つめる。
そいつは、コート上の脚本家。
他ならぬ、シナリオを創り出した人物だ。
私よりもはるかに小さいその背中…
さっきも見た。
最も、見飽きてしまうくらいには長く一緒にいるし。
前に見た時は、置き去りにするように私から離れて行ったけど。
そして気づいた。
正にそこに真実がある、と。
筋書きのスタートは。
全ての始まりは…