第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
最終クォーター中盤も過ぎたころ。
与えられたフリースローのチャンス。
結果は、キャプテンのフリースロー成功による1点。
そして、史奈が決めたスリーポイント。
最終的に4点の追加点へと変わり、チームの勝利をさらに加速させたんだ。
私はそんな風に頭で整理をつけるくらいには、冷静に行動できる方だ。
だけど…
「やったぁ~~~!!」
その声とともに、私の横を、後ろから前に向かう風が巻き起こり。
私の汗ばんだ頬を、申し訳程度に掠めていったんだ。
後方から来た何かが、自分のすぐ横を通り過ぎて行ったっことが、容易に想像できるその現象。
ありがたいことに、隠れる気もなく私の真ん前を通り過ぎて行ったから、その現象の名前もすぐに理解した。
興奮を抑えようともしないその後ろ姿と。
楽しげに左右に揺れるポニーテールが、本人の心情そのものを表しているようだった。
「史奈!やったね!!」
そう口にしながら、その言葉を投げかけた本人とハイタッチをした詩織。
横顔だけでも、その喜びようが十分感じ取れた。
「おう!当ったり前よ!!」
そして、その“おっきいものクラブ”に近寄るもう1つの人影。
キャプテン…なわけがないから。
「さっすがうちの得点王~♪」
そう口にしながら、悠々と史奈と詩織の間のスペースを陣取ったのは。
フリースロー中、史奈と一緒にスリーポイントライン外にいた紗恵。
2人に近づくときに、両腕を不自然な位置まで上げていたから何かと思ったら。
ちゃっかり、2人の肩にその腕を1本ずつまわしているんだ。
史奈も詩織も、紗恵よりずっと背が高いから、若干しんどそうに見えた。
見えたってだけで、紗恵(本人)は特に気にしていないようだけどな。