第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
ほんとどうかしているよ。
前方に相手選手が3人もいる状況で、前方にしか飛ばないパスを打とうとするなんて。
しかも、“今の場合”に限って言えば、自体はもっと深刻だ。
それは、こちら側の作戦が、相手にバレてるってことだ。
うちのキャプテンがご丁寧にも大声で指示を出すもんだから、スリーに対抗するプレイをすればいいということが、相手に知られてしまっている。
諸々を経て、今こうして1対3の戦況に陥っている。
私たちは何をしてるんだ?
トチ狂ったか、苦し紛れのプレイとしか思えない。
ボールの主導権がもうすぐ変わる。
誰もがそう思っていた。
「ゴールを目の前にして、欲を出してスリーなんか狙うからだ」と。
「その作戦が、そもそもの間違いだろ」と…
けれど、作戦が知られてるからなんだって言うんだ。
そもそも、その作戦を知ってるのは、私と目の前にいる3人だけではないはずだろ。
キャプテンや、相手選手の他2人。
それに、“こいつ”だって知ってるんだ。
だから…
主導権は変えてやるよ。
ただ、それは相手チームにではない。
この作戦の決行時から、ずっと私と共に行動して。
自らが得意とするエリアに身を置いている間は、誰にも抵抗の余地を与えない“こいつ”に。
“ドリブルで抜くのはまた今度にする”って決めた戦況を、チェストパスで乗り切るわけがねぇーだろ。
パスは出すためのもんじゃなくて…
『詩織!!』
(後ろに)戻すもんでもあるだろ。