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宵闇の明けと想ふは君だけと〈中学編〉

第5章 栄光の目前  〜決勝トーナメント準決勝〜


●藤堂 天● 〜東京体育館〜


分かったぞ。
愛華が作った戦略が。


思い描いた道筋が。


『ったく…』


ほんと。
面倒くさい上に手間のかかることさせやがって。


けれど、文句言っている暇もねぇーからな。
そうと決まれば、やることは1つだ。


愛華が作ったシナリオを目の当たりにして、そこに“今の自分にできること”を見出した私は。


数秒前までの、“2ポイントを稼いでお終い”の咄嗟の作戦が用済みになることを確信し。
愛華が用意した“結末”のために、身体は既に動き始めていることに気づいた。


プログラミングに関してはズブの素人だけど。
頭の中のコードの書き換えは、きっとコンピュータより私の方が早い。


そう思うくらい、頭で処理した動きが猛スピードで四肢に巡って行くのが分かった。
だから…


『しょうがねぇーなぁ!!』


そう口にして、多少強引にドリブルで駆け出したんだ。


ゴールリングに、背を向けて…


時間はコンマ数秒も掛からなかった。
相手選手たちの目の前に辿り着くのに。


すぐ真後ろには、本来の獲物(ゴール)がいるっていうのに。
あろうことかそれに背を向けて、距離を詰めるどころか離れようとしている。
何が悲しくて、私はこんなことをしているんだ…


けど分かってるんだ。
これが、今の私に出来ることで。


スリーへの道を作る、大切な一手だから。


こうして、ボールの主導権を持つ私はゴール下を離れて。
よりによって敵の中に身を投げたんだ。


対する相手選手は3人。
確かに、分は悪いよ。


けれど、ものは試しだ。
やってみたら、案外ドライブで抜けるのかもしれない。
3人は。


でも今は、そんなことを試している暇はない。
“今の私には、ドライブで何人抜ける実力があるのか”…
それはまた、別の機会に試すことにする。


だから今は。
ドリブルをしていたボールを両手で持ち。
自然に軽く肘を曲げて、両手の親指と人差し指で作った三角形の中にそれを収め。
本来、相手から守るべき存在のボールを、あろうことか胸の前で無防備に晒してみせたんだ。


つまりこれは…


?「チェストパスか?!」

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