第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
「攻め直すぞ!足動かせ!!」
そう言いながら、ドリブルでボールを進めるキャプテン…愛華。
綺麗に切り揃えられた前髪と、顔の横で揺れる横髪。
頭のてっぺんでまとめられたお団子は、それを下ろした時の髪の長さを連想させた。
その声に合わせて、ヘルプに向かうため私はゴール下から全力で走る。
センターラインを越えて、愛華を視界に捕らえれば。
ドリブルのまま、愛華も私に視線を合わせてきた。
あとは私がパスをもらって、ゴールしてしまえばいい話。
だけど…
?「ダメだ!8番持たせるな!!」
?「止めろ!!」
相手選手が、私と愛華の間に割って入ってきた。
瞬間、愛華の顔が見えなくなる。
目的は分かってる。
8番(私)を止めるためだ。
やっぱり、私はまだ警戒されている。
私がボールを持った時のリスクは、史奈とさほど変わらない…か。
だけど…愛華の方はどうだ?
警戒しなくて大丈夫か?
薄いペールブルーの頭髪に、敵陣に突っ込んでディフェンス2枚目でボールを奪われる、身長150cmに満たない選手は…脅威にはならない?
誰しも、パッと見の外見から、あたかもそいつの全てを理解したように思ってしまうものだ。
その理解が、“勘違い”とは微塵も思わずに。
確かに、一見。
脅威には見えない愛華だけれど、あいつだって私と肩を並べるレギュラーだ。
もちろん強いぞ?
そんなことを思っていると…
私の前に立ちはだかる相手選手の陰から、愛華がドリブルで飛び出したのが見えた。
あぁ、“私の力はいらない”ってことか。
?「な…に?!」
?「12番止めろ!!」
私にばかり気を取られていた相手チームは、再び自らペイントエリア内に向かって走り出す愛華を見て。
一様に豆鉄砲を食らったような顔をした。
まさか「もう一度止められにくる」なんて、思うはずもないからな。
だけど、今度はさっきとは違う。
ドリブルで駆け抜ける愛華の後ろ姿だけで分かる。
ボールを奪われにいったんじゃない。
自分で(ゴールを)決めにいったんだ。