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宵闇の明けと想ふは君だけと〈中学編〉

第5章 栄光の目前  〜決勝トーナメント準決勝〜


●藤堂 天● 〜東京体育館〜


「詩織!ボール回せ!!」


滞空中に聞こえたその声は、キャプテンのものだった。


私の隣で一緒に宙に浮いている詩織も、その声を聞き逃すはずもなく。
コンマ数秒の経過も感じさせないうちに、腕を振ってボールを放った。


「任せた!!」


徐々に視界が下がってゆく…
その間も、ボールは私たち2人を離れて、スリーポイントラインを越えた先に向かって飛んでいく。


ドシンッ!という音を立てて、私と詩織。
+αの足音がコートに響く。


足の裏に、痺れるような感覚を感じた後。
床に落ちた視線を上げる。


その時に気づいた。


コートにいる全員が、私と全く同じものに視線を向けている、ってことに。


私の場合、「視線を上げたらそこにいた」って方が正しいけれど。
それがたまたま目当てのものだった、ってだけだ。


“コートにいる全員の視線を集めるもの”。
それは、言わずもがなバスケットボールだ。


だけど、こうも言える。
“バスケットボールを持っている選手”。
それも同様に、全員の視線を集めることになる。


今の場合は“そっち”だ。
コートにいる全員が、私と全く同じ“選手”に視線を向けている。


その選手は…


ペールブルー色の髪。
直前に詩織から回されたボールを両手で掴み。
同じ色の瞳を、しっかりと私に向けていた。


まるで…


私と目が合うのを、待っていたかのようだった。


その瞬間まで、あたかもスローモーションにかかったように見えていた世界が。


2人の目が合い。
その世界を壊すかのように、瞬きをすると…


急に時が動き出す。


「ボール回すぞ!自分の仕事に掛かれ!」
 【梅月 愛華 2年 12番 PG 147cm】


加速する世界の中。
そう口にした人物は、誰よりも早く動いていた。


手にしたボールを捌き、出遅れる周囲の選手をものともせずに。


さすが。


私たちのキャプテンだ。

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