第2章 黒龍の苦悩の一日
「大体、お前も折角人間の体を取り戻したのにこんな復讐鬼の子を身籠るなど嫌ではないのか」
己のエゴで憑依者に染まりやすい夜梟を洗脳し豹斗鷹に変化させた自覚はアレックスにもある。
自我が薄く、未来のためとはいえこんな男に身を委ねられるのかと疑問を抱く。
しかしはまたきょとんとしてアレックスを見上げた。
『私は君に無視できない好感を抱いているのだが』
「……は?」
『そうか、皆がそうだから君もそう認識していると思い込んでいた。すまない』
「どういう意味だ」
聞きたくないが聞かないわけにもいかない。アレックスは己に未だ常識があるのだと再認識させられていた。
夜梟は真っ直ぐアレックスを見上げて言った。
『私も君を愛している。君と家族になることを望んでいる』
「は……」
『さあ、診察を始めよう』
返事を待たずは次のドアを開いた。