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【暇潰し】R18/Short Story【進撃】

第1章 Ⅰ*エルヴィン・スミス


エルヴィンはぽつりぽつりぽつりと、自信なさげに言葉を紡いだ。
こんな彼を見るのははじめてだった。

「…俺は36だ」
『うん…?Wikipediaで見たから知ってる』
「そうか…、は?」
『26よ』
「あの頃と変わらないな…」

あの頃の2人にも、10歳という年齢差があった。

「俺はに比べればオジサンだ」
『うん?』
「だが投げ出す事のできない物は、今の俺にはない」

思いの分だけ彼女を抱きしめる腕に力がこもっていた。

『エルヴィン…苦しっ…』

しかし腕を緩める事はしなかった。

「俺と…、生涯を共に生きて欲しい」

あの頃のエルヴィンが、けっして口にする事の出来なかった言葉だ。
泣いて喜びたいくらい嬉しいはずなのに、平凡な自分が素直に喜ばせてはくれない。

『でも…、私は…普通なの』
「普通?はだろう?」

おかしなことでも言われたように、エルヴィンは首を傾げている。
自分にとって重要なのはエルヴィンであることと同じように、彼も同じ思いなのかもしれない。
もし2人で共に生きることのできる未来があるなら。

『私で…良いの?』

この人と生きたいと強く思う。

「ハンジがを見つけてくれなければ…俺は生涯を独り身で過ごすところだったよ」

ここには自分を抱きしめる両腕がある。

『エルヴィン…愛してる』
「俺もだ…、愛している」

愛を伝えれば、名前を呼んで、愛を囁く声もある。


あの時に失ったものは、この手に戻っていた。
これ以上の幸せは、どこを探したってきっとない。
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